青猫文具箱

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ヘッドホンから、バンド曲のドラムが初めて聞こえた日。

同僚がバンドでドラムを叩いてるそうな。学生時代からだそうで、もう10年超。

それを知ったのは飲み会のふとした会話で、若木未生の「グラスハート」からの浅い知識なりに「ドラムって、スネアとバスドラどっちが『ドラム叩いてる!』て感じなんですか?それともハイハット?」みたいな話題を振ったところ、会社でそんな話題の振られ方をしたのは初めて、と嬉しそうにドラムの醍醐味やバンドでの位置づけなどを聞かされました。 

 

その日、なぜか「これまで聞いていたはずなのに意識してなかったドラムの音」と言うのが凄く気になって、家に帰ってすぐBUMP OF CHICKENのアルバムを引っ張りだし、一番良いヘッドフォンをパソコンに繋いでドラムを「聴き」ました。

ロックといえど普段、曲を聴きながら追っかけるのはボーカリストのメロディと歌詞。でもその日、ひたすらドラムを追っかけて聴いたアルバムは、何度もリピートしたはずなのに新鮮で楽しくて。

アルバムをドラム、ギター、ベース、ドラム、と聴いて一巡してからもう一度、アルバム全体として聴き直したら、ありふれた言葉だけど「世界が違って見えた」。音に深みが増したというよりは、聴こえる「音が増えた」のです。

で、そのとき学んだのは、実は「楽しいバンド音楽の聞き方」ではなくて「知るということはやっぱり楽しいんだな」ということです。

もう聞き慣れたはずの曲が新しく聴こえた時、自分は普段いろんなものを見逃してるんだなぁと改めて気づかされて。そのアルバムは歌詞を諳んじられるくらい聴き込んでいたのに。

 

このドラムの音が聴こえた体験って自分にとっては正しくセレンディピティでした。同僚との会話をきっかけに、ドラムの音から「知る」ことの楽しさに繋がった、というセレンディピティ。

それから、一時遠ざかっていた読書が増えました。だって「これまで知っていた、予測の範囲内とは別のことを知りたい」と思ったら、読書って一番簡単な方法です。仕事や友人はすぐ変えられないけれど、読む本はいつでも変えられます。

 読書が日常にとけ込むにつれて、目に見えて自分は変わらなかったかもしれないけれど、自分の見える世界は結構変わった気がします。

面倒な日報もPDCAを回すと思えば工夫して取り組めるし、会議も人間関係把握の場と思えば退屈なメモ取りに飽きません。何より、上司たちが気を回す「根回し」の重要さ(下っ端に取っては無駄に資料を作成して無駄にアポ取るだけ)を自分なりに共有できた頃から、任される仕事が変わったと思うのです。

 

他人を変えるなんて無理で、自分を変えるのも難しくて、でも色メガネをかけるように世界の見え方を変えることは案外簡単なんじゃないの、と。

ヘッドホンから、バンド曲のドラムが初めて聞こえた日、密やかに教えられた気がする気づき、です。

 

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